根井雅弘『現代イギリス経済学の群像』にはじまるカレツキ紹介は重要だが、
上記書籍でもカレツキ原論文は参照されておらず、孫引きである。
カレツキを紹介している大学生用経済学入門書はほとんど見当たらない。
つまりマルクスを学ぶ人間は近代経済学(ケインズ)への橋が既に架かっていることを知らず、
近代経済学を学ぶ人間はマルクスの意義を知らないで学生時代を終わる訳だ。
そして気付いたときには学ぶ時間が残っていないということになりかねない。

さて、カレツキはマルクス再生産表式を3部門に分け直し(転形問題論争にヒントが
あったと思う)、実物経済を省略したことでケインズよりはやく有効需要の概念を定式化した。
ここで3部門はケインズと同様、労働者、資本家、投資家と分けられる。

参考:
Michal Kalecki"The Marxian equations of reproduction and modern economics"
(「マルクスの再生産の方程式と近代経済学」1968,1991未邦訳)
 http://ssi.sagepub.com/content/7/6/73.full.pdf 有料?
根井雅弘『「ケインズ革命」の群像』145頁〜
栗田康之『資本主義経済の動態』105頁〜
カレツキ『資本主義の動態理論』79頁〜
鍋島直樹 『ケインズとカレツキ―ポスト・ケインズ派経済学の源泉』