物価と労働需要には正の相関関係があること(物価と労働需要には負の相関関係があることと同じとする)が、フィリップス曲線の理由だが、これは、消費財が1種類の時のみ言えるが、消費財が二つ以上の時は、成立しないことがある。なので、フィリップス曲線は、普遍的な性質をもたないことが示される:

消費財が二つ以上の時は、成立しない例:
記号の説明
L:労働量一般
L_1:第一消費財の生産のための労働
L_2:第一消費財の生産のための労働
p_1:第一消費財の価格
p_2:第二消費財の価格
w:賃金

第一消費財のの生産関数をL^(1/5),
第二消費財の生産関数をL^(4/5),
とすると、価格体系(p_1,p_2,w)の下で利潤を最大化する労働需要関数は、それぞれの消費財生産で
L_1={(p_1x1/5)/w}^(5/4)
L_2={(p_2x4/5)/w}^5
になる。これより、価格体系(p_1,p_2,w)=(5,5/4,1)では労働需要はL_1=1、L_2=1(労働需要の合計は2)となる。この時、消費財生産量はそれぞれ1である。
そこで、物価水準を消費財それぞれ1個の金額の合計で表すとすると、5+5/4=6.25である。
次に、別の価格体系(p_1,p_2,w)=(21/4,9/8,1)では、消費財それぞれ1個の金額の合計は、51/8=6.375,,,なので、物価水準は上昇している。
フィリップス曲線が正しければ、総労働需要が増えているはずである。しかし、労働需要はそれぞれの消費財生産でL_1=1.05^(5/4)=1.0628,,、L_2=0.9^5=0.590,,
で、合計は約1.652,,で、前の価格体系の下の2よりも減っている。

よって、消費財が一種類でない場合には、フィリップス曲線は一般性をもたず、成立しない。