以下、ケインズ一般理論23岩波文庫下より

…将来、人々は、マルクスよりもゲゼルの精神からより多くのものを学ぶだろう、そう
私は信じている。『自然的経済秩序』の序文を読めば、そこには彼の道徳的資質が遺憾
なく発揮されているのがわかるだろう。
思うに、彼のマルクス主義への回答はこの序文に沿ったものとなるはずである。

…彼はこう論じている。実物資本の増加は貨幣‐利子率によって抑止されており、このブレーキ
が取り外されたら、現代の世界にあっては、実物資本は急激に増加し、即刻ではないにせよ、
それほど時間が経過しないうちに、おそらくゼロの貨幣‐利子率が当たり前になるだろう。
こうして、第一に必要なことは貨幣‐利子率を引き下げることであり、そのためには、と彼は
指摘している、貨幣に他の非生産的な商品のストックと全く同様、持越費用を課すことである。
ここに生まれたのがかの有名な「スタンプ付き」貨幣という処方箋である。彼の名は主として
このスタンプ付き貨幣と結びつけて知られ、アーヴィング・フィッシャー教授もこれに賛辞を
惜しまなかった。この提案によると、流通紙幣(流通紙幣だけでなく、他の貨幣、少なくとも
ある形態の銀行貨幣にも、同様に適用する必要があることは言うまでもない)の価値を保持
しようと思ったら、保険証の場合と同様に、毎月、郵便局で購入した印紙〔スタンプ〕を、
紙幣に貼付しなければならない。もちろんこの印紙の料金はどこか適当な水準に設定すれば
いい。私の理論に従うなら、この料金はおおよそ、貨幣‐利子率(印紙料金は除く)と、完全
雇用と両立する新規投資率に対応する資本の限界効率との差となるよう定めるべきである。…