塩沢理論のもう一つの特徴は、各国の賃金率(実質賃金率)がモデル内部で決まってくると
いう点だ。HOS理論が要素価格均等化集合に焦点を当てているとの正反対だが、世界経
済において先進国・途上国の間に大きな経済格差・賃金格差があることは常識以前の話
だ。

日本国際経済学会のリカード原理200周年記念の共通論題セッションには俺もいて、塩沢
たちの講演も聞いたが、すぐには理解できなかったが、よく考えてみれば、塩沢の主張の
方がずっとまともだ。俺は、実証分析が基本だから、理論の優劣はどうでも良いが、今のと
ころ主流派貿易論は完全に出し抜かれたと思う。問題は、塩沢の国際価値論が、普通の
貿易理論と違って、線形代数や凸集合といったちょっと変った数学を勉強しなおさなけれ
ばならない点だろう。なかなか時間が取れないが、正則な国際価値の定義に必要なグラ
フ理論は、俺も時間をとって勉強しようと思っている。実証をやるにも、これくらいの理論は
消化すべきだろうと思っている。