2002.08.17放送のBS日本のうたで川野夏美が「不如帰」を唄った。
聞き始めて誰の曲か判らなかったが、終わりに(昭和63年/村上幸子)と出て
思わず声を上げた。以前つけっぱなしのラジオの帯番組で聴いていた彼女が、
突然亡くなったことを覚えていたからだ。しかし当時演歌には全く興味が無く、
彼女の姿形はおろか持ち歌ひとつさえ知らずにいた。
夏美嬢の歌で俄然興味を持って調べ「村上幸子大全集(5枚組)」と
小池可奈著「さっちゃん物語(三五館発行)」を手に入れた。
早速「不如帰」を聴いてみるとこれが全く違う。
思い出させてくれた夏美嬢には感謝するが、器が違いすぎよう。
内面を深く抉り出すようなその声は村上幸子の歌唱のうちでも特別なものだが、
思わず身震いしそうになる。この曲に賭けた彼女の思いが伝わってくるようだ。

演歌だからといって彼女は力むでも叫ぶでもない。美声でさらりと唄いながらも内実が深い。
他に類例を見ない珍しいタイプの演歌歌手だと思う。
もし健在ならば今46歳。「不如帰」や「にごりえ」のようなものが唄えることからして、
一つ年上の石川さゆりの好敵手たり得たのではと返す返すも残念に思う。

「さっちゃん物語」は村上幸子を知る上での定番でありご存知の方も多いと思うが、
彼女に興味のある方はぜひ読んで戴きたい。涙なくして読むことは叶わない。

村上幸子 (本名:鈴木幸子)
1959年10月21日 新潟県岩船郡荒川町生まれ
1990年07月23日 悪性リンパ腫で早世。享年31歳。