ネアンデルタール人は美術作品を作っていた 2018.2.23
http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-43165670

★ネアンデルタール人は野蛮人のようにこれまで思われてきたが、実際は芸術家だったようだ。22日付の米科学誌サイエンスに掲載された論文で明らかになった。

研究によると、ネアンデルタール人は現生人類が欧州に進出する2万年前の時点ですでに、スペインの洞窟で壁画を描いていたと分かった。
また、彩色した貝殻を宝飾品として使っていたようだ。
芸術表現はこれまで、現生人類(ホモ・サピエンス)に特有のもので、ネアンデルタール人などの旧人類にはない行動だと考えられてきた。
しかし、スペインのラ・パシエガ洞窟、マルトラビエソ洞窟、アルダレス洞窟の3カ所で、壁面にネアンデルタール人の手形や幾何学模様、赤い丸などが描かれている。
それぞれの洞窟は最大700キロ離れている。

調査チームは、壁画の正確な年代特定のため、ウラン・トリウム法と呼ばれる年代測定法を使った。壁画の表面に含まれるウランの放射性物質を測定する方法だ。
その結果、壁画が描かれたのは少なくとも6万5000年前だと判明した。対して、現生人類が欧州に現れたのは約4万5000年前のことだ。
このことから、この旧石器時代の壁画は、当時欧州にいた唯一の人類でホモサピエンスに「近い」ネアンデルタール人が描いたものだと明らかになった。
ただし、今のところ見つかっているネアンデルタール人による芸術表現は、抽象的なもののみだ。

調査論文を共同執筆したサザンプトン大学のアリスター・パイク教授は、
「19世紀に最初の化石が発見されて以来、ネアンデルタール人は粗野で未開で、芸術や象徴的表現能力がないといわれてきた。その見方が今でも残っている」と語った。
「ネアンデルタール人の行動がどこまで人間に近かったかは、盛んに議論されている。我々の発見は、その議論に大きく貢献するものとなる」

今回の調査には参加していない、ロンドン自然史博物館のクリス・ストリンガー教授は、今回の調査結果による年代特定の正確さに注目する。
「ネアンデルタール人が象徴的表現をしていたという主張は以前からあったが、年代特定が不明確だった。
あるいは、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスが同時に存在したとされる、4〜6万年前のことだと言われてきた。
つまり、発見された象徴的表現は現生人類のものかもしれない、あるいは現生人類に影響されたネアンデルタール人によるものかもしれなかった」

ストリンガー教授は、今回の新発見でネアンデルタール人には象徴的表現、あるいは芸術的表現能力があったと認められたと言う。「疑いが完全に払拭されたようだ」
教授はさらに、「これで、ネアンデルタール人と現生人類を分けるとされてきた行動のギャップも、さらに狭まる」と説明した。
しかし教授によると、動物や人など実際の対象を描く具象芸術については、ネアンデルタール人にその表現力があったと言える明確な例はまだ見つかっていない。
サザンプトン大のパイク教授はBBCニュースに対して、「『ネアンデルタール人は具象絵画を作ったのか?』が次の大きな疑問点だ。手形はある。赤い点はたくさんある。線も見つかった。
けれども、たとえば自分たちが狩っていた動物の絵はあるのか。それが知りたい」と話した。