ロシア人専門家、日本との平和条約なしに70年、ということはこの先もなくても大丈夫だろう 2015年10月23日 01:23
http://jp.sputniknews.com/politics/20151023/1062667.html

日本国民の一部はロシアがもうすぐにも南クリル諸島を渡してくれ、プーチン大統領の訪日がこれを促してくれるものと
信じ込んでいる。この期待が現実に即しているかどうか。以下に記載する論文は有名なロシア人東洋学者で歴史博士の
アナトーリー・コーシキン氏によるもので、実際、先の問いに答えるために発表された。

(以下、コーシキン氏の論文を引用)

2015年9月2日、日本帝国政府の代表者らによって無条件降伏と第二次世界大戦終戦についての条約が署名されて
70周年を記念する日、ロシア外務省は史実と国際合意に立脚した、いわゆる「クリル問題」に関する立場を明確に表した。
ロシア外務省のイーゴリ・モルフロフ次官は「インターファックス」通信からのインタビューに答え、クリルに関して日本との
交渉の可能性を除外した。出された声明は次のとおりだった。

「日本とは『クリル問題』についていかなる対話も我々は行っていない。この問題は70年前に解決済みだ。南クリルは
法的な根拠にしたがい、第2次世界大戦の結果として我々の国に移ってきた。これに対する主権と管轄権は疑いようもなく
ロシアにある。」

この声明のあと、ロシア国家のこの立場をラヴロフ外相も確認した。

これに加え、ロシア外務省指導部は両国の平和条約締結交渉の継続に合意している。

ロシア政府の占める立場に観測筋の間からは当惑が表された。なぜなら日本政府にとっては平和条約締結は クリル諸島の
帰属問題におけるロシアに降伏するも同じだからだ。日本政府は何年にもわたり、ロシアとの平和条約締結は「択捉、国後、
色丹、歯舞の4島返還」という条件が揃って初めて可能といい続けてきた。これに関して起きた外交摩擦の本質を解明する
必要がある。

1956年10月19日にモスクワで調印されたソ日共同宣言では両国は「正常な外交関係が回復したあと、平和条約締結交渉の
継続を行うことに合意した」とある。ところがこれは、日本の反論者やそれを支持するコメンテーターがなんとか確証づけようと
躍起になっているように、領土の確定に関する交渉の継続、ではない。

ソ日共同宣言の第9条は「ソヴィエト社会主義共和国連邦は,日本国の要請にこたえかつ日本国の利益を考慮して,歯舞諸島
及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし,これらの諸島は,日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の
平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする」とある。 当時、領土問題で妥協を図ろうと発案したフルシチョフ
第1書記は、これは日本側に対する最大限の譲歩だと語った。共同宣言の署名される前日、10月16日、フルシチョフは
日本側の全権代表を務めていた河野一郎農林大臣に対し、次のように語ったという。

「日本側は歯舞と色丹を平和条約を締結せずに受け取り、そのあと、我々も知らない、実際は存在していない別の何らかの
領土問題を解決したいと望んでいる。ソ連政府は一刻も早い日本との合意を望んでおり、領土問題を取引には利用していない。
だが私は再度、完全に明確に断固として言っておかねばならない。それは、歯舞、色丹以外は、我々は日本側からの領土問題に
対するクレームを一切受け付けず、これに関するいかなる提案も話し合うことは拒否するということだ。我々はそれを越えた先の
何らかの譲歩はできず、行わない。歯舞、色丹は平和条約締結後に日本に渡すことはできるだろうが、示された諸島を渡すことで、
領土問題は全て完全に解決済みとせねばならない。」

フルシチョフ氏は平和条約交渉に領土問題が含まれるという日本側の合意案を退けた。「共同宣言に従い、日本との領土問題の
討議を続けねばならない」と主張している方々は、どうやらこのことを知らないようだ。

しかも、こうした立場の支持者らは、今のロシアだけでなく、ソ連もこうした交渉をもう60年も続けているという。こうした人々は共同
宣言に見込まれている平和条約締結交渉を停止したのはソ連ではなく、日本の政府のほうだったということは知らないのだろう。
日ソ関係が最終的に正常化することに関心を抱いていない米国行政府のあからさまな圧力を受け、共同宣言で達成された条件に
違反して、日本政府は勝手に歯舞、色丹のみならず、さらにクリル諸島の中でも大きく、開発の進んだ国後、択捉までをも「返せ」と
要求しはじめた。