NATOナンバー2に聞く 欧州の安全保障の現状と日NATO協力 2015/10/26
http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=1592

2015年9月14日、東京財団では外務省が招へいしたNATO(北大西洋条約機構)事務次長の
アレキサンダー・バーシュボウ氏を迎えて日-NATOセミナーを開催した(外務省共催)。
同セミナーは日本の外交・安全保障専門家とNATO加盟国関係者らが参加した非公開会合
であり、バーシュボウ氏は欧州の安全保障と日NATO関係についての基調講演を行った。
セミナーの開催に先立ち、バーシュボウ氏は東京財団の独自インタビューに応じた。以下は
その内容である。


東京財団:今回日本を訪問した目的についてお聞かせください。 

バーシュボウ氏:私が今回日本を訪問したのは、日本政府とのハイレベル会合を継続する
ためです。長年にわたり、日本はNATOにとって良きパートナー、非常に強力なパートナーです。
実際、日本は欧州-大西洋地域外において初めてのパートナー国であり、ご承知のとおり
アフガン支援における日本の貢献は非常に大きいものでありました。しかし世界には様々な
課題があり、日本とNATOとの関係はアフガン支援だけに留まりません。私にとって今回日本を
訪問できたことは非常にタイミングが良く、今後我々と日本はどのような分野で協力を深める
ことができるのか、また今日世界が直面する安全保障上の問題解決において、どのように貢献
できるかなどについて議論出来ればと考えています。

東京財団:去年日本とNATOの間で、国別パートナーシップ協力計画(IPCP)が結ばれましたが、
さらに協力を強化したい分野について具体的にお聞かせください。

バーシュボウ氏:IPCPは我々が協力できそうな分野を広くカバーしておりますが、日本にとっても
優先度の高い課題であるサイバー防衛や民間レベルでの緊急事態への対応、海洋安全保障、
専門的な知見や情報の交換・共有、戦略的コミュニケーション、パブリック・ディプロマシー、
そしてもちろんテロ対策も含まれます。これらはすぐに思い浮かぶ分野ではありますが、多様な
課題に対して関心を共有する我々にとって、他にも協力できる分野があると思っています。


平和と安全保障への貢献
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東京財団:安倍政権が進める安保法制など、より柔軟性を持たせようとする日本の安保政策に
ついてどのような評価をしていますか。

バーシュボウ氏:NATOの観点からみれば、日本は長年にわたって世界の平和と安全に多大な
貢献をしています。このことにより、我々はアフガニスタンにおいて日本と協力することができ、
他の危機への対応も行っています。これはNATOだけではなく国連の枠組みにおいても同様です。
しかし我々としては、積極的平和主義と今回の安保法制に関心を持ち続けてきてもいます。
もちろん我々は日本の内政事情に首を突っ込むわけではありませんが、これによりNATOと日本が
さらに関係を強化できることを望んでいます。先ほど申しましたように、グローバルな課題が山積
していることから、今回の安倍政権の決定は、相互において非常に有益なものとなるでしょう。

東京財団:具体的にはどのような利益があると思われますか?

バーシュボウ氏:NATOはパートナー国との協力のために幅広い実効的プログラムを提供しており、
これらは各国のニーズに沿った形でカスタマイズすることが可能です。例えば、特に中東や北
アフリカ地域のように、近傍でのテロの脅威への対策が求められる国々において、我々はテロ
対策の一環として防衛能力の向上支援を強化しています。一方日本との間においては、サイバー
防衛やサイバー・セキュリティ、自然災害や民間緊急事態への対処などNATOが多くの経験を有する
分野において、日本に対して多くの知見を提供できるプログラムがあるのではないかと思います。

 この9月下旬から欧州大西洋災害対策調整センター(EADRCC)がウクライナで開催する訓練に
日本が参加することも、その一環であると考えています。当然ながら、NATOは各国軍隊の相互
運用性と専門性の向上と、NATOや国連の枠組みでの作戦活動の基礎となる軍事交流活動を幅広く
実施しており、パートナー国が参加できるようにしています。私たちは大変広範囲にわたる協力形態を
持っています。この全てを実施する必要はありませんが、日本にとって利益となる分野は多くあると
思います。