旅館福田家二代目の福田彰は魯山人と19年にわたって接し、他界の際に葬儀委員長
まで務めた人であるが、「魯山人は『非人間の天才』というイメージが強くありますね?」という質問に対し、

「世間はいろいろ言いますが、魯山人は実際、そんな人ではなかったんですけどねえ。私自身、魯山人に怒鳴られたという記憶もありませんしね。魯山人がいい人だったとまではいいませんが、しっかりと我々のことを気遣ってくれる優しい人でしたよ。『非人間魯山人』像が世間に広まったのはたぶん、魯山人を悪くいうことで利益を得る人たちがいたからですよ。実際、彼に怒鳴られたり仲たがいしたりした職人も多くいましたし、そういう人たちの中には魯山人を良く思わなかった人もいたでしょう。確かに魯山人は性格的に一癖、二癖ありましたし、傲慢と言えば傲慢でしたけれど、それは自信に裏打ちされたものであった。いい悪いは別にして「芸術家の世界」に生きる人はそういう面を誰でも持っているもので、むしろ癖を持っていない人はこの世界では不思議とあまり伸びないんです」

山田和(作家)「北大路魯山人美の世界・和食の天才」三井記念美術館