ただ、工業製品とアウラについてベンヤミンが言ったことが本当に正しいことなのかどうかは分からない。
例えば日本刀などの工芸やベンツやフェラーリなど高級車の洗練された工業技術の中に、ある種のアウラを見る向きもある。
というか日本においては職人魂という形で工芸的洗練を貴ぶ風潮は前近代から強い。
漱石も草枕で「日本は巾着切りの態度(小手先の器用な態度)で美術品を作る」と描写しているように、
これは江戸期以前からの日本美術の特徴で、昨今のCGイラストやフィギュア造型もまたその傾向を示している。
ミニマリストが筆痕を消したり直線や曲線を機械的に加工したりするのも、工業的洗練の中に
ある種のアウラを見ている点では同じである。そこからは洗練するほどアウラが増幅し
手作業の痕が出るほどアウラが減退するという逆転した思考さえ感じることができる。