>>56
僕はミニマリズムが抽象表現主義までのコンテクストを覆したとは思えないんですよね。
むしろ両者は同根だと思っているわけです。

桑山は、ニューヨークに滞在中自分が日本人であることをとても疎ましく思った、と言っています。
彼は典型的なコスモポリタンで、言い換えれば熱烈な左翼的モダニストなのです。
彼や他のミニマリストの方法論も、大きな流れの中で言えばダダイズムや反芸術などの破壊や革新と共通した手法でもあるし、
共産主義国家の誕生に熱狂していたヨーロッパの前衛芸術家たちの仕事や
ロシア構成主義にも既にミニマルアートの原型が見られることなどからも、
20世紀に起きた美術運動は、全体がモダニズムつまり近代合理主義に結局は帰結すると言えるのではないでしょうか。

民族性・物語性・装飾性を否定し、極端な抽象化・全体化・純化・一般化を追求する、
これはそもそもモダニズムの特徴であって、ミニマリズムだけの特徴ではないのです。

その後の脱構築やポストモダンの議論は難解でよくわからないのですが、桑山に関してはそういったところです。