>>577
伊東安兵衛が昔の丹波立杭の鉄砲窯のことを記録した文章が手元にあるから
窯の特徴を抜書きしてあげましょう。

―窯は丘ぞいに長くかまぼこ形に山の方へ走っていますが、ここの窯は普通の登り窯とちがって
背が低く、半分は土にうまって、うずくまっているかっこうはまるで大蛇がはっているようです。
鉄砲窯といって棚もなければさやも使わないのっぺらぼうのもので、この原始的な窯からどうして
丹波のあんないい焼物が出来るのか不思議な気さえします。
(中略)
棚もない部屋に一見、無造作に品物をならべて、下から焼き上げ、上にゆくに従って横の穴から
薪をなげ込んでゆきますが、見ていると薪が真っ赤に焼けている品物の焔の中にひゅっ、ひゅっと
飛んでいって、品物にぶつかりはしないかとはらはらします。部屋は十五から二十位のものが多く
原始的な窯でいながら千三百度からの温度が上り、しかも燃料は経済的だとのことです。