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【 鯰絵 】 [転載禁止]©2ch.net
0019わたしはダリ?名無しさん?
垢版 |
2015/06/21(日) 20:25:38.38
>>17
 Episode 1 「宮様のお成り」
 皇族の一員、某殿下が妃殿下とともに小竹庵の町にお忍びで来町することになった。殿下はある淡水魚を研究なさっていて、
この町の水産高校へのご訪問をご希望になり、ついでに町の隅々まで足をお運びになるらしい。突然のことに町は、応接セッ
トを新調しなければ、いや赤い絨毯を買わなければ、と、かなりの混乱状態に陥った。殿下がいらっしゃるコースには私の働
く事務所のある郷土資料館も含まれていたため、普段公開していない所蔵品をその日のためだけに展示することになり、私に
とってももはや他人事ではなかった。
 そのうち県から担当の職員というのが資料館にやってきた。どうやらリハーサルが必要らしい。資料館関係者はこぞって、
分刻みに定められた当日のスケジュールを配られた。なんでも殿下を載せた車が道路を走るとき、信号が偶然青でなければ
ならないそうで、そのために分刻みの行動を強いられるのだ。
 リハにやって来た県の職員は、まず、資料館の前に車がどの角度で止まるべきかを真剣に検討した。その位置を手元の資
料館平面図に落とすと、「では、ここからこのように殿下が降りていらっしゃいますから(と自分が殿下役になって動いて見
せ)、助役さんと館長さんはこの位置に立って、2分以内でご挨拶をして下さい」と次々に指示を出す。殿下を出迎えるのは
わずかな人間で、私たち平の職員は館の中にいなければならなかった。資料館は駐車場から階段を十数段上って入り口のド
アにたどり着く構造になっており、事務所からは入り口に来る人間がよく見える。私たちの立ち位置を指示した県の職員さ
んはその構造に気づくと、「殿下が入ってくるまでは見ないように」と念を押した(見下ろすと失礼だかららしい)。その他、
写真撮影は係りの者(町の広報担当)だけに許されたが、職員が殿下と一緒に写るのは厳禁とされた(ただし、偶然一緒に写っ
てしまった場合にはその限りではないという。難しい)。
0020わたしはダリ?名無しさん?
垢版 |
2015/06/21(日) 20:26:28.38
 さて当日。職員に「殿下妃殿下お成り」と書かれた名札が配られ、無理矢理つけさせられた。殿下がここでトイレ休憩を
取ることは予定に無かったが、万が一を考えて、新しいタオルと新しい無香料の石鹸の用意を強いられた(意味不明)。資料
館の周りには、お忍びのはずなのに情報を掴んだ町民で溢れていた。手にはどこから入手したのか日の丸の旗が握られてい
る。私はタイムスリップをしたかのような感覚に襲われつつも、言われた通りの立ち位置に立った。
 館内に何人かのSPが入って来ると、部屋のあちこちに散らばって殿下のお成りを待った。私は「SPさんって普段は何
やってるんですか?」と聞いた。SPさんは「機動隊やっています」と微笑んだ。そのうちいよいよ殿下の車が入ってくる
と、SPさんは「あ、到着なさったようですよ、では私はこれで」と死角に身を隠した(見えてはいけないらしい)。
 町民の旗が千切れんばかりに振られる。車は2台だった。殿下は、お忍びなのに、妃殿下のほか侍従やら何やら10人く
らい引き連れてやっていらっしゃった。そして本当に予定通りに行動なさり、あっという間にお帰りになった。
 私竹子のアルバムには、偶然写ってしまった殿下一行と私の写真が納められている。

 ↓

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