神戸新聞 昭和51年10月15日

「祈祷料返せ」
「不吉なお告げで大金」被害者同盟
「人見て説法当たり前」祈祷師側

正当な宗教活動か、宗教に名を借りた詐欺行為か――。
祈祷、運命鑑定料をめぐって京都のの祈祷師と兵庫、大阪の信者達の間でホットな“宗教論争”が巻き起こっている。

「高野山権大僧正、皇族とも親しい大物という触れ込みに鑑定を信じ込まされ、祈祷料など総額7,700万円を貢がされた」と
被害者達は被害者同盟を結成、祈祷・鑑定料等の返還を求める損害賠償請求の準備を進めれば、
祈祷師側は「正当な宗教活動だ。運命鑑定が100%的中すると思い込む方がどだいおかしな理な話。
人をみて説法をする宗教の世界では少々の脚色は許される」と反論。両者の主張は真っ向から対立している。

被害者同盟の一部の人たちは14日までに、この祈祷師を神戸垂水署に訴えるなど、とうとう告訴騒ぎにまでエスカレ−トした。
信じる、信じないはこと心の領域の問題。しかも憲法で保障された信教の自由にもからまるだけに、
訴えを受けた同署は「果たして刑事事件のまな板に乗るものやら……」いささか当惑気味である。

元信者等に訴えられたのは京都に庵を構えるA氏(48)。A氏に騙されたと訴えるのは神戸市垂水区千鳥ヶ丘3−8、
造園業大森珍昭さん(44)ら45年から今年4月にかけ祈祷、鑑定を受けた西脇市の織物業者、大阪市の会社役員、元ホステスら29人。
今年4月、大森さんがA氏相手に祈祷・鑑定料など約1,540万円の損害賠償を求める仮処分申請を神戸地裁尼崎支部に出したことから
「私もだまされた」という信者が相次ぎ両者の宗教論争が表面化した。同会の話や申請内容を総合すると
「A氏は高野山権大僧正」をかたり、信者や身内の死などをほのめかす等の運命鑑定が多いという。