「みうらじゅんフェス マイブームの全貌展」
川崎市民ミュージアム

みうらじゅんという人物を知ったのは、若い頃に読んだ、みうらじゅんが
一人で編集した「VOWでやんす」という一冊の本だった。その後ラフォーレ
原宿で開催された「大物産展」で感銘を受けてファンになったが、あれから
20年くらい経つというのに、やっていることが全く変化していないところに
ある意味感動した。
展覧会でまず感心したのが7歳の頃に書かれた「ケロリ新聞」で、これが
漫画と文章によって緻密に構成されており、ガキのクセにやたらと完成度が高い。
後年名をなす人物は、子供の頃からその才能の片鱗を示すのだということをあら
ためて実感した。
圧巻は「いやげものの世界」だろうか。これは貰って迷惑な地方のみやげ物の意味
なのだが、その代表格がカスハガであろう。なぜこんな風景や人々を写真におさめ
て観光用のハガキにしてしまったのかが全く理解できず、その脱力感に思わず笑っ
てしまう。その他、金色の城のミニフィギュアやゴムヘビ(!)、または地元の
観光名所を刺繍した掛け軸である「変ジク」、ヤシの実で作られた奇妙な人形の
通称「ヤシヤン」など、みやげ物として貰うと確実にテンションが下がる逸品が
これでもかというくらいに並んでいた。
みうらじゅん本人の絵画もはじめて見た。やはりイラストレーターだけあってカ
ラフルでキッチュな作風のものが多数展示されていた。なかでも「飛び出し栄子」
や「乙葉マイラブ」あたりに、彼の女性に対する趣味嗜好と持ち前のエロさがよく
あらわれていて印象に残った。
白眉なのがアウトドア般若心経で、これは街の看板の一文字を写真におさめ、
それを並べて般若心経として読ませていくというものだが、棟方志功の「般若心経
の柵」と通底するものがあって素晴らしかった。「蘊」などという文字をよくまあ
探しだしたものだ。
自分の好きなものを集め(ぶっちゃけていうと美術品や骨董とよばれる物から
すればただのゴミだけど)、それを世間に公開し、多くの人々の共感を集め、
さらに巻き込み金儲けしてしまう、還暦を迎えたみうらじゅんの偉大さに心から
敬意を表したいと思う。