東京国立近代美術館「熊谷守一 生きるよろこび」

 97歳まで長生きして文化勲章を辞退し、「画壇の仙人」と呼ばれた
熊谷守一の大展覧会。よく知られている独自の画風だけでなく、列車に
はねられた女性の死体を描いた「轢死」や(これは劣化しまくってて
真っ黒でよくわからない)、それをもとにした「夜」という、
ちょっとゾクッとするような画も若い時には描いていたのが新発見だった。
 その著作「へたも絵のうち」を読むと、この画家が権威欲や権力欲、
金銭欲にすらほとんど興味の無い「無欲の人」だったということが
よく理解できる。そのあたりが老年から晩年の、色面と色面と輪郭線
だけのシンプルだが温和で優しい画風につながっていったのだと思った。