現代朝鮮語は、南朝鮮の、韓族のたてた国のひとつ、新羅の言語が
母体となっている。もし、西暦紀元後という新しい時期に、日本列
島が、朝鮮半島と同じく、南朝鮮勢力によって統一されたものであ
るならば、ほぼ同一の過程をへて成立したこの両国の言語は、そう
とうに近いものでなければならない。最近、応神天皇は、新王朝の
始祖で、朝鮮から侵入した人ではないかとの説も説かれている。こ
の場合も、両国の言語は、近くなるはずであろう。しかし、事実は
、それに反している。

私は、天皇家の出自が、朝鮮半島であるとする多くの見解には、疑
問をもつ。日本人の核をなす民族は、おそらくは、大陸から渡って
きたのであろうが、それは、天皇家の発生よりも、ずっと古い時代
のことであったと思うのである。

フィンランド人やハンガリー人は、その故郷をウラル地帯に持つ。
現在混血によって、そうとうに西欧化しているにもかかわらず、言
語は、ヨーロッパ語とは、はっきり異なっており、もとのウラル系
フィン・ウゴル語族に属する言語を使用している。もし、朝鮮から
きた勢力が、比較的新しい時期に日本を統一したのであれば、それ
に近い現象がおきるはずではないだろうか。
安本美典著「邪馬台国と高天原伝承」より。