>>305
>今度はペラール(服部四郎かもしれん)が再構した*e *oからi uに高舌化した音を上げてみると
この「高舌化」は上代日本語に係るのか。
>>249で琉球語に対して「*eや*oの高舌化」と言っているため,上代or古代日本語に対してなのか分かりづらい。
(上代語と時期は異なるが現代琉球語にも「*eや*oの高舌化」は起きている。)

>無理に「薬」の語中に「o」を立てる必要もないように思える。
母音が消滅しないからではなく音価の問題。*suを再建すると異なる音になることが予想される。
トマ論文に首里の例は挙がっていないが,「沖縄語辞典」では,kusui(0)「薬」(<*kusori)に対して
jasii(1)「やすり」(<*jasuri),maciri(1)「祭り」(<*maturi),sizjiri(0)「硯」(<*suzuri)となる。
(rは-i_i-の環境でcjiri(1)「霧・桐・塵」,nukuzjiri(0)「鋸」のようにしばしば保持される。)

>むしろ問題は「婿」のko。これがなんで高舌化しないのか。
語末の*oは高舌化しないのが基本だからでは。だからこそ「門(可度)・鴨(加毛)・里(佐刀)・鳩(波斗)」あるいは
「雲(久毛)・糞(倶蘇)・黒(久路)・裾(須蘇)」のような語末にオ列甲類を含む有坂法則に従う語例が見つかる。

>高舌化も音消滅と同様、語頭・語末の有声音が高舌化したのか?と思うけど、「蒜」が例外になっている。
有声音という発想はなかった。確かに,論文の5.2で高舌化の例外となる語のうち,yo1wa-「弱い」,mo1zu「百舌」の2例を除く
pe1ra「箆」,ke1pu「今日」,pe1ta「海辺」,sake1b-「叫ぶ」,kape1r/s-「返る/返す」,uke1ra「オケラ(植物)」,ter-「照る」,ko1pi2「恋」,ko1ga-「焦がす/焦げる」,
to1ma「苫」,so1ra「空」,to1ra「虎」,ko1mo 「こも(海藻)」は無声音に続く*e,*oが「高舌化しなかった例」と推定され,良く当てはまる。
トマ論文中の他の例では,awo「青(阿遠)」(<*awo),tukus-「尽くす(都久之)」(<*tukos-),kugane「黄金(久我祢)」(<*ko-n-kanai)が>>390氏の仮説の例外となっている。
(それぞれ†a(w)u,†tukos-,†koganeを予測。)

(再建形*は厳密でないし,同時代的でもない。琉球祖語や日琉祖語で表記を分けていない。)
(†は実際に例証されない形の意味。しかし†koganeは中古以降には現れる。)