>>339
「有声音【の*e, *o】が高舌化した」という興味深い仮説を>>305で立てたのにそれを検討しない理由が分からない。
また,誰が書いたかソースも不明なデータでなく,せめて「時代別国語大辞典 上代編」か「日本国語大辞典」くらいは参照してほしい。
大きな図書館ならまず入っているし,数十分もあればそこに挙がっている語例の確認くらいできるはず。
以下食い違いだけ。
コ1ヒ1 鯉(LL) 「上代」コ1ヒ?(コ1は「新撰字鏡」“古比”に拠る) 「日国」コ?ヒ?(アLF)
ソ1マ 杣(?) 「日国」アHH(鎌倉)
ト1ヲ 十(HL) 「上代」ト2ヲ 「日国」ト2ヲ ト2の根拠は不明。ト「十」が乙類のためか?
*ノ1キ1 軒(HH) 「上代」ノ?キ? 「日国」ノ?キ?
*ノ1ミ? 蚤(LL) 「上代」―― 「日国」ノ?ミ?
*モ1ミ1,2 籾(HH) 「上代」モ?ミ? 「日国」モ?ミ?
*モ1モ1 腿(LF) 百(?) 「日国」百アLL(平安・鎌倉)
*ヨ1ヒ1 宵(HH) 「上代」ヨ2ヒ1 「日国」ヨ1,2ヒ1 (「岩波古語辞典」ヨ1ヒ1)
*ヨ1メ1 嫁(HH) 「上代」ヨ?メ1 「日国ヨ?メ?
抜け
ソ1デ 袖(HH) 「上代」ソ1デ 「日国」ソ1デ
ト1マ 苫(?) 「上代」ト1マ 「日国」ト1マ(HH)
ト?ラ 虎(HH) 「上代」ト1ラ 「日国」ト?ラ

*が「有声音高舌化」仮説の反例。しかし見て分かるように,「上代」も「日国」も「モ1モ1」以外オ甲類と見ていない。
「宵」は「夜」との類推でヨ2ヒ1→ヨ1ヒ1と変化したと見なせる(松本説ではオ甲乙が異音である根拠の一つ)。
オ甲を推定する根拠があるなら別だが(cf. 八丈ヌキ,ヌンメ),そうでなければオ乙類と見て問題ない。
mo1mo1はともに元は1拍語*moの繰り返し形の例外(「腿」は「耳,頬」も参照)。

>アクセントにも何か法則があるように見えない
高起式(H-)か,低起式(L-)で琉球のC系列に対応(恋,空《梢》,蚤)。
服部説に従えば,1拍目に長母音を立てることになる。
例外は鯉(B),腿(B)だが,「鯉」は首里kuuʔiju,与那嶺kuuʔjuuなどと語形が違う。
「腿」は上でも書いたように1拍語*moの繰り返し形の可能性(音声的には*mo:mo:?)。
ちなみにトマ論文にある「百舌」モ1ズや「こも(海藻)」コ1モ?が挙げられていないことから分かるように,そのリストには抜けが目立つ。
いちいち書かないが,一度ご自身で語例を検討した方が良い。