>>404
整合性が取れない例を歯がゆく感じるのは当然と言える。問題は歯がゆく感じたその先にある。
「「i」が低く終わる音であったことを仮定」するとして,その仮説に合わない場合に日琉祖語形を改変すべきか,それとも仮説を棄却するか。
「本土から輸入」と見るのは悪くないが,「いつ」「どこの方言の」「どのような音形,アクセント型が」琉球語に「どのような形で」借用されたか論じる必要がある。
(「いつ」「どこの方言」は相対的で,重要なのは「体系」のつじつまが合うか。)
単に自説に合わないから「借用」で片付けようとするのでは何も説明したことにならない(繰り返すが借用だろうという見通しを立てること自体は悪くない)。
ただし「第一拍はどちらも低で問題なく一致」というのは,金田一春彦があれだけ「平」と「去」は「低起」で一致すると説いた金田一法則=式保存則の本質を
理解していない素朴な調素観に立っているように映る(昇-と低-だったら「問題がある一致」なのだろうか?)。

-iは様々な由来が考えられるため統一的なアクセントの説明が可能とは期待できないのではないか。
上代以前の日琉祖語のある時点で共時的に「被覆形」と「露出形」の交替が確立したのは確かだろうが,
その成立には「被覆形」→「露出形」もあれば「露出形」→「被覆形」(さらに「露出形」←X→「被覆形」)もあるだろう。
私は「影」*kagai(RL)の方が成立が古く,そこから被覆形*kaga-が作られたと考える。被覆形は「無標」ゆえ低起式のみを残す*kaga-(LL)となった。
これに*mi「見」が付いた形は*miが昇り核を持つか否かでkaga-mi(LL-L,LL-H)となるが,いずれにせよB系列となりそのまま琉球祖語形(および本土祖形)になる。
ちなみに「金田一の法則は本土日本語にしか適用されない」かは,琉球語では複合語アクセントの研究自体がそれほど進んでいないため不明ということで「検討の余地がある」と書いた。
語音とアクセントの関係についてはいくつか先行研究あり。最近では佐藤栄作「第一次アクセントの成立と語音」(http://www.f.waseda.jp/uenok/ronshu/ronshu_03_sato.pdf)などがある
(私はうまく行っていると思えず賛同しないが興味深くはある)。
390 ◆oflnzmdu96氏が>405で挙げた語例も含め検討しているので興味があれば一読されたし(すでにご存じかもしれないが)。