西洋語だつて表記と發音との乖離は相當な者だが、さうとは云へ、凡てのスペルを發音に合はす可しとは誰も云はぬ。
スペルは語の發音を表す一方に於ては、語の語源を保存する意味もある(正書法)。
歴史的に古い言語であればある程、此の表記と發音との乖離は進む。
日本語を文字を用ゐて表記するやうになつた當時の假名遣が其の儘保存されるのは國語學的には何等奇異な縡でも何でも無く、
寧ろ正書法からしても正當な縡である。
 言葉は時代と共に沿革する者なりと云ふ幼稚な原則論にて、何もかもが變化する者だと斷ずるのは啻に原理主義に過ぎず、
精緻な學問的解釋とは云へぬ。