【母】ボウ ボ も はは
 古形は【象形文字】で女と云ふ字に點を二打ち、其にて兩方の乳房を指事してハハと云ふ文字としたものである。
母と云へば直に父の縡を聯想するが、「母」字の成因は「父」字とは全然關係が無い。

【海】カイ うみ うなばら
 水と母との合字。ウミの縡。故に三水。每は聲符。
倂し「母」の古音にはマイ「梅」、クワイ(悔、海)等があつたので、此の聲符の基礎は「母」にあると云ふ可きである。
K々と水を湛へてゐるので海の縡を滄溟(さうめい)と謂ひ、暝く幽遠なる縡を溟晦(めいくわい)と謂ふやうに、「クワイ」なる音は「クライ」と云ふ意の言葉だつたのだらう。

【每】バイ マイ、まい、ごと
 本義は草の芽が後からと盛に伸び出る縡。其處で草の象徵たる【象形文字、三叉みたいな】と母とを組合せたもの。
「母(ボウ)」は聲符。
「每」字がシバシバ、オノオノ、スベテ、ゴトニの意に轉義したのは草の盛に伸び出る本義から聯想したものである。
「梅、莓(バイ)」、「海、者、晦(クワイ)」、「侮(ブ)」、「敏(ビン)」等に含まれる「每」は凡て聲符として應用されたものである。

漢字起源の硏究、監修影山修

 斯有る漢字の成立より考へれば、「海」「毎」の如き字が正字である筈は無いのである。
他の漢字も推して知る可し。