国土交通省が21日発表した2017年1月1日時点の中国5県の公示地価は、住宅地、商業地の上昇地点数が427カ所と昨年の351カ所から22%増えた。地価の平均変動率は住宅地、商業地とも前年に比べマイナスとなったが、
下落幅は縮小した。広島県では住宅地が26年ぶりに上昇に転じたほか、商業地も2年連続で上がった。岡山市なども含め都市部で地価が上昇している。

 中国5県の住宅地の平均下落率は0.4%と前年に比べ0.5ポイント改善した。商業地は0.1%と0.5ポイントの改善。下落率の改善は住宅地が7年、商業地が6年連続だ。

 広島県は住宅地の地価がプラス0.2%(前年は0.3%の下落)と、26年ぶりに上昇に転じた。上昇地点数は194カ所と前年に比べ35カ所増えた。最高価格地点となったのは広島市中区中町の住宅地。広島市のメインストリートである平和大通り沿いで、
近年マンション開発が著しく今年から新たに調査地点に追加した。「建築コストの上昇を背景に、マンション開発も需要が見込める街中の一等地に集中している。土地獲得の競争が激しく、価格上昇が著しい」(地元デベロッパーのマンション開発担当者)。

 商業地の上昇地点は84カ所と10カ所増えた。最高価格地点は広島市中区八丁堀地区。オフィスの建て替え需要が旺盛なほか、空室率・賃料も改善傾向にある。

 岡山は26年ぶりに商業地の平均変動率が横ばいになった。大型商業施設のイオンモール岡山が開業したJR岡山駅前など中心部の地価上昇が全体を押し上げた。住宅地、商業地ともに県北や県中部が下落、南部の中心部が上昇という傾向は変わっていない。

 島根県は住宅地の下落率が1.1%と0.5ポイント改善した。横ばい地点が前年の3カ所から17カ所へと大幅に増えた。「15年連続下落しており、値ごろ感が出てきた。松江市や出雲市など生活や交通の便が良い地域でも、若い子育て世代でも買いやすい水準になったようだ」と不動産鑑定士の大畑裕治氏は指摘する。

 山口県では住宅地の上昇地点数が11カ所と前年に比べ10カ所増えた。全体の平均変動率では下落基調だが、住宅地として人気がある岩国市、下松市、山口市ではJR駅近郊を中心に価格上昇地点が増えている。特に新山口駅周辺では再開発計画が進んでおり、駅周辺の商業施設や住宅の着工増に期待が高まっている。

 マンション販売のエストラストの藤田尚久常務は「岩国などの条件のいいマンションではすぐに完売するケースもあるが、県北部では下落率が大きい。人気エリアへの集中とそうでない場所の過疎化という二極化が加速している」と話す。

 地価の改善が進む一方、上昇地点数は広島、岡山などの都心部に集中するなど限定的だ。鳥取県は鳥取、米子市の中心部で地価の改善・下げ止まり傾向が見られる。しかし、「協同組合やよいデパート」が閉店した米子市角盤町の商業地では地価が10.1%下落。全国の下落率でも首位となった。「幹線道路から離れ、駐車スペースが少ないことが影響している」(地元不動産会社)という。

https://www.nikkei.com/article/DGXLZO14318920R20C17A3LC0000/