調整基金枯渇
大雪の対応
新幹線事業
福井市 財政綱渡り
一般会計赤字で専門家「危機意識低い」

2017年度一般会計が赤字に陥り、18年度も12億円の財源不足となった福井市。市は2月の大雪対応を主な理由に挙げるが、一方で23年春予定の新幹線延伸開業に向けた公共事業は進めている。
緊急時に備えた財政調整基金は既に枯渇、綱渡りの財政運営に専門家は「危機意識が低すぎる」と批判している。

北陸新幹線の延伸区間金沢―敦賀間にあるJR福井駅前に16年、地上21階建ての高層ビルがオープンした。
低層階に博物館など市の施設が入り、総事業費141億円のうち50億円を市が負担した。
市は、1992年度から18年度にかけて福井駅周辺の道路整備などに計195億円を計上した。
14年度から新幹線工事関連の支出も本格化し、10年程度で計約45億円を支出。4億円かけて観光案内所などが入る施設の建設に着手する。
一般的に基金の積立額は標準財政規模の10%が目安で福井市の場合は58億円程度とされる。
しかし、06年度の31億円をピークに減少傾向が続き、市が「想定外」とする大雪が降った今年2月時点で7億円しかなかった。
大雪では市道の除雪などに例年の7倍近い49億円がかかった。基金を取り崩しても足りず、1141億円の17年度一般会計は2億円の赤字に。
赤字分を穴埋めした18年度予算は12億円が不足し、職員給与のカットに踏み切った。
市によると、同市では毎年度、除雪費用が当初予算内で収まらず、補正予算を組むのが常態化していた。
担当者は「駅周辺の開発に予算を使いたかった面はある。福井市だけが新幹線事業をやらないわけにはいかない」と理解を求める。
15年に北陸新幹線が開通した富山市も新幹線関連の出費がかさんだが、01年につくった都市基盤整備基金や市債でまかなった。
整備基金は常に20億円前後を維持していたという。同市は「災害を想定し、財政調整基金は一定の水準を保つことが行政としてのあり方だ」と話す。

新幹線、金沢市は市債発行で対応
大雪でも基金取り崩さず

金沢市の場合は新幹線関連の出費は通常通り市債の発行で対応した。2月の大雪に対して10億4千万円の追加補正予算を組んだものの、基金は取り崩さず、
財源に国からの補助や既決の一般会計予算の残余分などを充てた。担当者は「中期財政計画を作成し、将来を見据えながら健全な財政運営に努めている」と強調する。
総務省によると、自治体の一般会計が赤字になったのは、和歌山県湯浅町と東日本大震災で被災した岩手県久慈市の13年度以来。
東北大の河村和徳准教授(政治学)は「最近は雪が少なかったとはいえ、もともと多く降る地域なのに福井市は危機意識が低すぎたのではないか」と指摘。
「自治体は本来、災害対策を第一に考えなければならない。雪と新幹線、災害と地域活性化のバランスをどう取るか考え直すべきだ」と提言した。


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