【街 みらい】北九州VS福岡 魅力探し・データ(1)産業 工業の街 物流機能を武器に [福岡県]
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官営八幡製鉄所の操業開始(1901年)以降、多くの企業や工場が集積する北九州市。九州の
ビジネスを支える中枢都市として大型ビルが林立する商都・福岡市に対し、製造や物流企業の誘致で
雇用を生みだし、地域経済の浮揚を目指す。両市によると、2017年度の企業誘致実績は、北九州市
54社に対し、福岡市は57社。北九州市は製造業が26社とほぼ半数を占める。福岡市はソフト
ウエアやゲーム開発などが計40社で新興のクリエーティブ産業が約7割を占める。北九州市と近郊
には製鉄業や自動車業が立地するため、関連する製造業の進出が目立つが、福岡市にない「武器」と
して存在感が高まっているのが物流拠点としての機能だ。北九州市企業立地支援課は「物流施設を整備
したい業者からの問い合わせが、ここ2、3年で急増した」と話す。実際、物流業の誘致件数は、
1〜2社だった13、14年度に対し、15年度は11社に。16年度6社、17年度7社と推移して
いる。企業にとって、陸海空の充実した輸送環境は大きな魅力だ。門司区にはJR貨物の
北九州貨物ターミナル駅があり、九州自動車道と東九州自動車道は小倉南区で結節する。北九州港には
関東・関西方面へのフェリーが発着し、北九州空港は24時間運用が可能だ。加えて最近は、
ドライバー不足や環境配慮のため、輸送手段をトラックからフェリー、鉄道に切り替える「
モーダルシフト」も進む。こうした動きも北九州への追い風といえそうだ。昨年12月、ガーゼや
脱脂綿で国内トップシェアを誇る医療衛生用品の製造販売「オオサキメディカル」(名古屋市)が、
小倉南区の「北九州空港跡地産業団地」(34・8ヘクタール)に進出することが正式に決まった。
 約1万1500平方メートルの土地を購入する契約を北九州市と締結。九州では業界最大規模の
物流センターを建設し、西日本一円への輸送拠点とする計画だ。同社の担当者は「フェリーと
鉄道貨物の拠点に近く、輸送面でメリットが大きい」と進出の理由を説明する。ほかにも、市が分譲
する産業・物流団地は「売れ行き好調」(市関係者)という。フェリーターミナルに隣接する「
マリナクロス新門司」(門司区、139ヘクタール)、ひびきコンテナターミナルに近い「
響灘臨海工業団地」(若松区、444ヘクタール)を中心に、全分譲面積の9割が売却済みだ。一方、
福岡市が17年度に誘致した物流企業は1社だ。「工業用水や大規模な用地が確保できず、北九州市の
ような戦略は立てられない」。福岡市企業誘致課の担当者は打ち明ける。
 地の利を生かした企業誘致は「工業都市」を再生に導く。