世界遺産、官営八幡製鐵所をルーツの
日本の鉄、再浮上への基点期す 「NIPPON STEEL」始動
https://www.sankeibiz.jp/business/news/190401/bsc1904010500001-n1.htm
 新日鉄住金が1日付で「日本製鉄(にっぽんせいてつ)」に社名変更し、生まれ変わった。英字表記は「
NIPPON STEEL(ニッポン スチール)」。日本発祥の製鉄会社として国内外で存在感を
高める狙いだ。1世紀余りを生き抜いたものづくりのDNA。かつての世界トップの鉄鋼メーカーが
名実ともに日本を代表して首位奪還を目指す。グローバル化が加速する中、業界の巨人は転換点を
迎えている。
 ◆1世紀余のDNA
 「高速鉄道用のレールもあれば、重い荷物を積んだ貨物鉄道向けもある。品質に失敗は許されない」。
八幡製鉄所(北九州市)軌条工場。世界最長の150メートルのレールを造れる圧延機を前に、形鋼部
の村松恭行主幹は言う。国内シェアの約8割を握る鉄道レールを年50万〜60万トン生産し、うち約
40万トンを輸出する。世界文化遺産の官営八幡製鉄所は1901年に操業を開始。明治政府が開設
した主な目的はレールの国産化で、ものづくりの伝統が今も息づく。その後、日本製鉄(にほんせいてつ
)や、源流に当たる八幡製鉄などに姿を変えた。日本製鉄の橋本英二新社長(3月末まで副社長)も
中学校の修学旅行で八幡製鉄所を訪れた。日本製鉄は包摂的な商号とされる。海外展開の積極化に加え
、1月に完全子会社にした日新製鋼(4月1日付で日鉄日新製鋼)、3月下旬に子会社化する
山陽特殊製鋼などグループ拡大が背景にある。
 ◆会社存続への危機感
 新日鉄住金は新日本製鉄と住友金属工業が合併して生まれた。住友グループの有力企業だった住金の
名前が消えることに感傷的な意見もあるが、「会社の存続が一番大事。『住友』とか言っていられない」
と中堅幹部。知名度不足の危機感も込められている。「しんにってつじゅうきん」と間違えられることは「
鉄は国家なり」と称された高度経済成長期には考えられなかった。就活生の就職希望企業で200位
圏外というデータもある。将来を担う人材の確保に支障を来しかねない。日本製鉄が2022年に国内
3位の神戸製鋼所を取り込み、27年に2位のJFEホールディングスと経営統合へ−。ある業界
関係者は私見を披露する。川崎製鉄とNKKが統合してJFEが誕生したのが02年、新日鉄住金の
発足が12年。10年ごとに起きた再編を踏襲し、今後はそのスピードが倍になるとの見立てだ。国内
市場寡占化の点で今の法規制では実現は難しいが、「日本」を冠する社名が業界再編の号砲となるかもしれない。
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