松本さまが座敷に上がっているあいだ、草履取り金沢は主人の草履を二枚裏合わせにして、腰に差すか、懐にしまって控室で待機している。

そして、玄関で「誰々の草履取り」と呼ばれると、玄関の式台から1mほど離れた所から、松本さまが降りる足元へ草履を投げ揃えた。

草履が上手く揃わなければ、松本さまに恥をかかせる事になる。
そのため、草履取り金沢は日頃から草履投げの練習を欠かさなかったのであった。