集団的自衛権は再考を=長谷部恭男早大院教授−インタビュー・憲法改正を問う
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憲法改正について、インタビューに答える早大大学院の長谷部恭男教授=5日、東京都新宿区の同大

 安倍晋三首相が提起した憲法改正について、早大大学院の長谷部恭男教授(憲法学)に話を聞いた。

 −首相は、多くの憲法学者が自衛隊違憲論を主張しているとの認識だが。

 私も現状では憲法違反だと思う。集団的自衛権の行使を認めているから。今の自衛隊という組織の規模は
大きくなり過ぎている、という意味で憲法上、問題があるという人もいる。自衛隊自体がけしからんという人も
いるかもしれない。
 逆に、個別的自衛権を行使するのに必要な範囲内での自衛隊は、あっても全然問題ないと思っている。
私は、日本国民の生命、財産を守るための実力組織は、現在の憲法の下でも当然認められるという考え方だ。
日本政府も戦後、ずっとそういう考え方だったと思う。

 −9条1、2項を維持し、自衛隊を明記する考え方については。

 具体的な条文の案が出ないことには、はっきりしたことは言えない。集団的自衛権の行使も容認される現状
を書き込むのであれば、筋が違うと思っている。もともと認めていなかったはずだから、まずは元に戻して
もらわないと(いけない)。原状に戻した上で、本当に集団的自衛権の行使が必要なのか、議論を改めて
しないといけない。

 −2020年の新憲法施行の目標については。

 スケジュールが先にあるのは変な感じがする。憲法は政治、社会の基本原則。なるべく幅広い立場の人の
コンセンサス(同意)が得られるような憲法改正でなければならない。まずは、そのようなコンセンサスを
しっかりつくることが大事だ。今のところ、なかなかそういう雰囲気になっていない。

 −衆院選と改憲の国民投票の同時実施も取り沙汰されたが。

 公職選挙法上の選挙運動規制と、国民投票に関する運動の規制の在り方は相当差がある。両方一緒に、
となると相当混乱が起こる可能性がある。

 −憲法改正に関して、どういう国民議論を期待するか。

 何のために変えるかをまず考えないといけない。例えば、9条をどう変えても、全部なくしたとしても、北朝鮮が
ミサイルを撃つのをやめるとか、核実験をしなくなることはあり得ない。憲法を変えても何ともならない話が
世の中にいっぱいある。憲法は人間が持っている多種多様な道具の一つ。目的に対応した手直しが、本当に
必要であればすればいい。

 長谷部 恭男氏(はせべ・やすお)56年生まれ。東大法卒。学習院大教授、東大大学院教授を経て、
14年から現職。広島県出身。(2017/09/12-15:13)