そろそろ左派は〈経済〉を語ろう  ブレイディみかこ

ブレイディ 
英国だけじゃなくて、こういう反緊縮運動の流れがいま欧州の左派のメインストリームになっているんですよね。

北田 
でも、「大きな政府」による再分配政策を提唱すると必ず「それで、財源はどうするんだ?」っていう話になっちゃいますよね。それこそ旧態然とした
「古い社会主義」「古い社会民主主義」の復興は、いまではもう不可能じゃないかって。日本ではそういう風に左派が言うから話が奇妙になる。

ブレイディ 
欧州では、むしろ保守派の人びとがよく「赤字財政をどうするんだ?」っていう批判をします。財政危機をあおっているのはだいたい保守派で、
それに対して左派が「けち臭いことを言っていないで、政府はドーンと財政出動して俺たちのためにお金を使え」と批判するという構図が一般的です。

ブレイディ 
反緊縮マニフェストには「緊縮財政で暗い国をつくらなくとも、投資と成長で収入を増やせば財政は健全になる」とも書かれていて、
実際に「ニューディール」という言葉も使われていました。

それと、これはまあ英国に住むわたしからすればホラーな話なんですが、餓死者を出し、平均寿命の伸びを止めてまで緊縮財政を進めてきた保守党政権は、
実はぜんぜん借金を返せてないんですよね。当初は二〇一五年までに財政赤字をなくすって言ってたんですけど、いつのまにか二〇三一年まで期限が延びてるし、
実は緊縮財政をはじめた二〇一〇年以来、国の借金が七〇〇〇億ポンドも増えている。緊縮財政は国を暗くしただけでなく、財政健全化するどころか、
逆に借金増えてるじゃないかって。日本の人びとも、この愚かな例に学んでほしい。