男女共同基本計画が2000年12月に閣議決定され、2001年にはフェミニズム寄りの論者が「男女共同参画」に関する議論を展開する一方、各地で条例の策定に関わる議論が進んでいく。「ジェンダーフリー」も啓発用の用語として言及される機会が増えた。この頃から、男女共同参画基本計画(第二次)が閣議決定されたのが2005年12月までの間は、おもに「ジェンダーフリー教育」と「男女共同参画」を標的にしたバックラッシュが一部のメディアで熱をおびだす。

 たとえば「統一教会」(世界基督教統一神霊協会)系の新聞、世界日報は2002年5月20日に「教育現場に浸透する『ジェンダー・フリー』」という記事を掲載して以降、ジェンダーフリー・バッシングの特集を行う。その特集記事は、後に数冊の小冊子 や、書籍 にまとめられた。また、産経新聞は、2002年4月14日の一面トップにて、ジェンダーフリーに批判的な記事を掲載して以降、社説や識者コラムなどでも関連ニュースを繰り返し批判的に取りあげる(例えば日本政策センターの小冊子、『これがジェンダー・フリーの正体だ』を2003年6月23日、7月7日の二度に渡って紹介するなど、他の保守系メディアに呼応することも多々見受けられる)。あるいは、産経新聞社のオピニオン雑誌『正論』(公称10万部)も、2000年ごろには既に男女共同参画批判の論文を断続的に掲載していたが、2002年5月号以降は、ほぼ毎号のようにジェンダーフリーなどへのネガティブ・キャンペーンを展開した。

 ジェンダーバッシングを展開する宗教団体としては、統一教会のほか、キリストの幕屋が有名であり、しばしば男女共同参画に関わるシンポジウムや保守系の集会に「動員」される模様が観測される 。また、日本会議に親和性の高い宗教団体として、神道政治連盟、国柱会、仏所護念会、霊友会、成長の家、神社本庁、モラロジー研究所、念法眞教、生長の家、神道青年会など多くが指摘されている 。

 ジェンダーフリーや男女共同参画、ときには男女平等自体をバッシングする本も多く出版され、TVでも何度か取りあげられた。ウェブ上にもそれらの言説に啓発されたブログやホームページ、掲示板での書き込みなどが数多く見うけられ、数多くのメーリングリスト、メールマガジンにおいても議題として採用されていき、例えば「反フェミニズム通信」(300部前後)、「「日本国の刷新・再生」―21世紀研究会―(読者参加型)」(1200部前後)、「ひのまるなび」(500部前後)など、百〜数千単位の読者登録数を持つメールマガジンが、少なくとも百件以上「男女共同参画」「ジェンダーフリー」等に否定的な言及をしていく 。

 当時最も注目を集めていた保守団体「新しい歴史教科書をつくる会」は2001年8月15日、中学校教科書の採択結果発表を迎える。結果は歴史の採択率は0.039%、公民は0.055%。つくる会もまた2002年頃からジェンダーフリー問題に熱心に取り組み出す。斎藤美奈子はその変遷を「ポスト歴史教科書問題」(『物は言いよう』、平凡社、2004)と名づけた。