江田 趣旨は理解できますが、実際問題として、世界がそれをできるまでになっているかどうか、
議論の余地が残っているのではないでしょうか。

私はこう思う。
日本国憲法は、軍事面において主権が一部分欠落した憲法です。
国家主権は金甌無欠でなければならないのだから、現在の憲法には欠陥がある、という言い方があった。
いわゆる従来の改憲論とは、そういうことでしょう。

しかし、国家主権とは、さまざまな機能が集合してできているのだから、
一つの機能が抜けていても、主権が「欠けている」ことにはならないのではないか。
日本が軍事面で欠落していたとしても、「日本は完全な主権国家でない」という必要はない。
まして、冷戦後は世界各国が軍事的な意味での主権を放棄して国際公共財に譲りわたさなければならない、
そんな時代がきているのではないでしょうか。

その意味で日本国憲法というのは、いわば新しい時代を先取りしすぎていた。
しかも自国だけが先取りしていたものだから、勝手な国だ、という言われ方もしてきた。
しかし、今後の世界はそういう方向に向かっているのだから、
一部軍事面が欠けた主権国家として日本はやっていけばいいのであって、
その部分を回復することは必要ない。
むしろ世界を、あるいは国連をそういう方向に導いていくべきです。