古期ロシア語 jati は現在形の活用では、元の *ьm- という語根を基礎として変化します。
一人称単数では -õ という語尾が付きますが、その鼻母音は前出のように早くに鼻音性が失われて、u となりました。
ここから一旦* ьmu なる形が創出され、それは語頭に規則的に子音 j が置かれて*j ьmu>imu となりました。

他方で、この形は短すぎてイマイチしっくりこないと感じる人たちもいました。
その人たちは、この動詞に前綴りを置いて、もっと意味的にも語形的にも分かりやすい形を創出しようとしました。
その時選ばれたのが、「上へ」を意味するvz- なる前綴りです。
なので不定形では規則的に *vz-jati>взять ですね。

こちらは簡単。問題なのは現在形です。
元の形 *ьmu に前綴りvz- を付けて *vzьmu としたのはいいのですが、ここで ь の扱いが問題となりました。

古期ロシア語で ь はレッキとした母音でちゃんと音節を成します。(成節的超短母音)
ところが代を経るごとに、それは非成節的な、単なる先行子音の軟口蓋化を示すだけの記号と成り下がってしまったのです!
そうすると、vzьm- と子音が3連チャンしてしまい、これは近世のロシア人には非常に発音しにくくなっていました。

そこで、v と z の間に挿入母音 o を入れることで解決したとですw
つまり前綴りの vz- は後に来る語が母音で始まる場合はそのまま、子音の場合は voz- にするというように決められたのです。

ど、ど〜ですかー?
vzjat' の現在形 voz'mu は不規則な形でも何でもないでしょ?
今度 vzjanu とか言っているロシアのマセたガキを見つけたら、このことを教えてやって下さいネv(^_^v)♪