鉄板が入ってそうな爪先の尖った革靴と、キツいアイパー、冷酷な眼の威圧感。15歳には見えない「本物のアウトロー」オーラだった。
僕らの真ん中まで歩いてきて、見立くんは一言、超余裕な感じで言った。
「どちらさん?」
見立くんはたぶん高南中の松嶋と瓜田だと気づいていたはずだ。けれど、あえてぼけてみせた。まるで「お前らなんか眼中にない」という風に。
その言葉だけで、勝負は決まったような気がする。
松嶋くんは「高南中の松嶋だよ。知ってるだろ」とすごんだけど、見立くんはまったく怯まなかった。僕は逆に、松嶋くんがややビビっているのに気づいた。普段あんなにクールな松嶋くんを、一言でビビらせるなんて。この見立真一という男、ただ者じゃない。
これが、後の関東連合ナンバー1とナンバー2が、初めて出会った瞬間だった。
その後、見立くんと松嶋くんのメンチの切り合いの途中で、見立くん側の仲間が集まって来てしまい、そっちと僕が揉め出して中途半端に小突きあってるうちにゴチャゴチャした結果、見立くんと松嶋くんの勝負はつかなかった。
そのまま僕、見立くん、松嶋くん僕と揉み合った高井田のSくんの4人は、パールセンター商店街から深夜の梅里中央公園に移動した。寒い冬空の下、K田くん、カンジくんを含む東田中学校の昭和53世代の猛者たちがそこに集まっていた。

見立くんが突然僕に言った。
「カップヌードル、何味が好き?」
僕はすかさず「カレーです!」と答えた。この時、「カレーです!」の「です!」にみんなが振り返った。
ひょっとして年下…?
K田くんが松嶋くんに詰め寄る。
「こいつ、松嶋の中学のナンバー2じゃないの?」
松嶋くんは即座に答えた。
「こいつ2年生だよ。1つ下の後輩」
みんなが一斉に僕を凝視する。それを見立くんが制した。
「今さ、カップヌードルの話で盛り上がってんだよね。カネ呼べよ」
カネとは、東田中学の2年生のアタマのことらしい。
カンジくんに呼ばれて、紫色のスーツにリーゼントのカネが原付バイクで現れた。僕はカネとすぐに打ち解けた。
その後、みんなで一緒にカップヌードルを食べた。