「四国初の並列粘土槨」
「石井の山ノ神古墳 墳丘と同時造成」 徳島新聞朝刊 平成30年3月1日

石井町教委は28日、古墳時代前期とみられる前方後円墳「山ノ神古墳」(同町石井)の後円部の墳頂で、木棺を粘土で包んだ埋葬施設「粘土槨」が2基並んだ状態で見つかったと発表した。
粘土槨が墳丘と同時並行で築かれたことも判明し、いずれも四国で初めての出土例。 専門家は「全国的にも珍しい事例で、古墳研究の基礎資料になる」としている。

粘土槨は、墳頂部の地表面から約50〜70cm下で発見された。箱形木棺(幅約1.15m)と割竹形木棺(約1.2m)とみられ、約1.1mの間隔を空けて置かれていた。
全国の豪族は長辺を南北に向ける配置が多いが、県内の他の古墳に見られる特徴と同じく、東西に向ける形で埋められていた。

先に墳丘を完成させ、後で土を掘って木棺を埋め戻す方法が一般的だが、山ノ神古墳では盛土の堆積状況から、墳丘と粘土槨が同時に造られたことが分かった。

同様の事例は国史跡の和泉黄金塚古墳(大阪府)など近畿地方にみられるが、四国では見つかっていなかった。古墳調査に詳しい兵庫県立考古博物館の石野博信名誉館長は「墓を造り、葬送儀礼をしてから墳丘を仕上げる過程が分かる珍しい事例。
徳島の古代文化の独自性や、近畿政権との関係を考える材料にもなる」としている。

山ノ神古墳は2014年に発掘調査を開始。全長57mで、前方後円墳としては県内3番目の規模であることが分かっている。17年には、前方後円墳に隣接する円墳周辺で、県内2例目となる筒型銅器が出土している。

この「山ノ神古墳」は、東隣に鎮座する「白鳥神社」と合わせて、「日本武尊」の陵墓とみられている。  @阿波