仏教には暦や所有という基本概念の規定はないし、身分などの規定もない。
職制の分類という概念もないし犯罪の処罰や服制などの規定もない。ただ
人民を救済するための道徳と行儀作法が規定されているばかりなので
総合的な思想体系たりえなかったということだろう。このあたりは西欧における
ローマ法とキリスト教の関係に相似する。中国から日本に散発的に渡来する
思想体系は、個々はそれぞれすばらしいものには違いないと推定されるものの
具体的にどのような性質のものかは当時の権力者たちには理解しようがない
ものであって、最新の法令律のようなもの、道徳律のようなもの、服制律の
ようなものを解釈しながら興味本位でやってみたり取捨選択していたり、というのが
実態であったと思われる。