>>217

『平家物語』諸本の中で最古態本とされる延慶本の当該部部分には

猿程ニ日モクレカタニナリヌレハ、今井四郎兼平、楯六郎親忠、八嶋四郎、
落合五郎ヲ先トシテ、一万余騎ノ勢ニテ、平家ノ陣ノ後、
西ノ山ノ上ヨリサシマハシテ、時ヲトツトツクリタリケレハ、
黒坂口、柳原ニヒカヘタル大手三万余騎、同時ニ時ヲ作ル。
前後五万余騎カヲメク声一、谷ニヒヒキミネニヒ引テ、
ヲヒタタシクソ聞ヘケル。

とあって、火牛の記述は全くありません。この件が記述されているのは増補本の集大成の『源平盛衰記』に、

木曾は、追手に寄けるが、牛四五百疋取集て、角に続松結付て、
夜の深るをぞ相待ける。

のみです。これは史実とは認めておらず、中国の古書からの模倣です。