米国務長官解任 政権の不安定化必至 関係修復できず
http://mainichi.jp/articles/20180314/k00/00m/030/164000c

 ティラーソン氏は、政治経験はないものの石油大手経営トップとして各国首脳との人脈を築いた。
自由主義のもとでの国際秩序や米国の国際貢献の意義を重視する「国際協調派」(グローバリスト)の筆頭として、
トランプ氏の奔放な言動をはじめ、不確定要因の多い政権内における「重し」になっていると評価されてきた。

 一方で政権発足初期から、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」離脱や、
エルサレムをイスラエルの首都と認定する決定など、多くの外交方針でトランプ氏との見解の相違が表面化。
昨年10月には、国防関係者との会議の席でティラーソン氏がトランプ氏を「能なし」と呼んだと報道され、
「関係修復は不可能」との観測が広がっていた。

 政権の最重要課題である北朝鮮情勢を巡っては、外交解決に向けた対話の重要性を一貫して唱えるティラーソン氏を、
トランプ氏が「時間の無駄」と公然と批判するなど、米外交トップとしての信頼性が問われる事態に陥っていた。
今月8日にはトランプ氏が一転、金正恩朝鮮労働党委員長との米朝首脳会談に臨む考えを表明したが、
アフリカ歴訪中のティラーソン氏は「大統領自身が決断した」と述べ、決定過程に関与していなかったことをにじませた。

 トランプ氏はティラーソン氏解任を機に、ホワイトハウス主導の外交を強める考えとみられる。
後任の長官に指名されたポンペオ米中央情報局(CIA)長官は、日常的にトランプ氏と面会して国内外の情勢を報告する立場で、
トランプ氏の高い信頼を得ているが、金委員長の「排除」計画に言及したこともある強硬派だ。
米朝対話が頓挫した場合、軍事オプション行使への傾斜など、米国の外交・安保政策が一気に不安定化する可能性もはらんでいる。

 政権内のグローバリストでは既に今月、コーン国家経済会議(NEC)委員長が辞任した。
ティラーソン氏は、盟友とされるマティス国防長官やムニューシン財務長官とともに、
誰か1人が退任する場合は他の2人も辞任することを誓う「スーサイド・パクト(心中協定)」と呼ばれる合意を結んでいると伝えられる。
今後、閣僚の辞任・解任ドミノが引き起こされるとの観測も現実味を帯びている。