>>72の続き。
「僕は以前、鹿児島の知覧から飛び立った特攻機の無線を聞いていた海軍士官の
日記を見ました。そこには〈今日もまた、「海軍のバカヤロー」と言って散華(さんげ)
するものあり〉と記されていた。だから、みんなが勇猛果敢に死んだというのは違うと
書いたら、どんな反応が来たと思いますか。『当時の海軍の無線は本土から沖縄まで
届かない。だから保阪の言っていることはウソだ』と。こういうのを一知半解と
言うんです」
――実際はどうなのですか。
「特攻機は沖縄どころか、鹿児島湾で墜落してしまったり、沖縄に着く前に米軍に
撃ち落とされてしまっている。そういう事実も知らず、一知半解で物事を語るのが
歴史修正主義者の特徴です」
――極論すれば、歴史修正主義者にとっては資料など不要で、むしろ邪魔だと。
「ええ。最初に『日本は侵略なんてしていない』という旗を立て、それに都合のいい
材料をかき集めて検証もしない。客観的に物事を見ない人たちは資料を馬鹿にします。
そうした風潮が広がっているのは、怖い」
 ただ、物事を客観的に見ようとする者が自民党の宰相の中にもいないわけでは
なかった。公文書の重要性を訴え、公文書管理法の制定(2009年成立)を
した福田康夫氏はその代表格であろう。
保阪氏も「福田さんは実証主義的な方です」と評価する。その福田氏がリードした
公文書管理法は、第1条で「目的」を次のようにうたっている。
〈この法律は、国の諸活動や歴史的事実の記録である公文書が、健全な民主主義の
根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得る
であることにかんがみ、行政が適正に運営されるようにするとともに、国の諸活動を
及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする〉(抜粋)}