『悪の論理』 倉前盛通著

「(昭和16年9月6日の御前会議の)そのあくる日から、
ソ満国境のソ連軍は一斉にヨーロッパに移動しはじめ、独ソ戦線に向かった。
驚いたドイツは日本政府へ質問を寄せてきた。
『ソ満国境のソ連赤軍が一斉にヨーロッパ戦線へ移動しはじめたのはいかなる理由であるか。
日本はソ連に対し何らかの保障を与えたのではないか』
だが、日本政府がソ連にわざわざ保障を与えるはずもないのであって、
これは明らかに御前会議の極秘内容が、その日のうちにソ連に筒抜けになったことを暗示している。
ゾルゲと尾崎が、それから1か月後に逮捕された理由も、この御前会議の重大決定が、
どのようなルートでソ連に漏れたかを追及した結果、
かねてマークされていた二人が浮かんできたというわけであろう。」