西郷どんが「革命家」? 大河に違和感を抱く理由
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 だが、維新150年にあわせて制作された今年のNHK大河ドラマ『西郷どん』は、
明らかに明治維新は革命で、西郷は革命家だったと位置づけている。
それがわかるのが、流罪になっていた西郷隆盛が沖永良部島から薩摩(鹿児島県)に帰るシーンだ。

 ドラマでは、西郷と同じ流罪人だった川口雪篷が、舟で島を出る西郷を、自ら書いた「革命」の旗を振って見送った。
雪篷は、蘭学者の小関三英が翻訳したフランス皇帝ナポレオンの伝記『那波列翁(ナポレオン)伝初編』を島に持ち込み、
西郷にナポレオンの業績を教えている。

ドラマの時代考証を担当した歴史学者の磯田道史さんは『素顔の西郷隆盛』(新潮新書)の中で
「西郷は島暮らしで革命思想を育んだ」との見方を示している。
このシーンには磯田さんの「革命家・西郷」を印象づける狙いがあったのだろう。

 幕末の志士たちは革命の大義ではなく、下級士官に過ぎなかったナポレオンが草莽を近代的な軍にまとめあげ、
封建勢力を打ち破ったことに感銘を受けたのではないか。

 松陰の最後の弟子だった山田顕義は、戊辰戦争で討伐軍を指揮し、
西郷から「あの小童、用兵の天才でごわす」と絶賛されて「日本の小ナポレオン」と呼ばれた。
山田はのちにナポレオン法典を学んで初代の司法大臣(今の法相)となる。

 ちなみに山田が法学を普及させるため設立した日本法律学校が、今の日本大学だ。
スポーツ関連の不祥事が続き、法令順守(コンプライアンス)が厳しく問われる今の姿を、「学祖」の山田はさぞ苦々しく見ているだろう。

 これまでにも歴史学者はもちろん、多くの文化人が明治維新の意義を考察し、数え切れないほどの著作や論文を残している。
戦前の「日本資本主義論争」でも維新の意義や、やり残した革命について大きな論争になり、
この論争が戦後に共産党系と社会党左派などの非共産党系が分かれる背景のひとつとなった。

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