幕末の世界情勢を見れば、英国と仏国が世界を二分する勢力だった。
英仏はアフリカで、中東で、東南アジアで、オセアニアで、中国で、そして
日本で、鎬を削りあう仲だった。仏は幕府に公然と、英は薩長に隠然と加担
した。慶喜はあるとき英国が薩長の背景にいることに気づいた。仏式陸軍
を率いながら長州征伐を直前になって中止したのはそういうことだ。
もし征伐を強行していれば英国軍の介入を招いただろう。慶喜は折れた。