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 歴史好きの読者には土佐藩出身の軍人、政治家、谷干城(1837〜1911)が1877年、
 西南戦争で西郷軍をくい止め、明治政府を救ったことはよく知られていよう。
 本書の眼目はその後の長い人生と思想を明らかにしたところにある。
 「国家主義者」「保守主義者」と思われがちだが、議会と言論の自由の重要性を深く理解していた。
 旧来の身分制を解消し、真の「民権」を伸長させようとした。貴族院議員として活躍。
 大陸に軍事的に膨張するより経済的発展を求めるべきだと考え、ロシアとの戦争に反対した。
 こうした主張の多くは現実政治、外交のダイナミズムの中で容易に実現しなかったが、ぶれずに国民と国益のことを思いつづけた政治家の生涯を浮かび上がらせている。(栗)

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