福島の悲劇は私に戊辰戦争の会津の悲劇を想い起こさせる。会津を含む東北の悲劇と言ってもいい。
 現首相の菅直人は自らを長州人としている。高杉晋作が好きというのも同郷だからという要素が大きい。
小泉純一郎は父親が薩摩の出身であり、やはり長州人を自負する安倍晋三を加えれば、
薩長がいまだにこの国の政治を動かしているとも言える。
 福島を含む東北は「白河以北一山百文」として、その政治から切り捨てられてきたのである。
「薩長軍は官軍にあらず、官賊だ」とする会津の人たちがいまも薩長に怨みを深くしているのは、
彼らが戦いで死んだ者の埋葬を許さなかったからである。
 賊軍すなわち犯罪者という理由で、官軍は会津藩士の遺体の埋葬を禁じた。そのため、
放置された遺体は狐や狸や野犬に食いちぎられ、烏につつかれたりして惨憺たる有様となった。
一部は白骨化し、一帯は死臭ただよう地獄と化したという。そこを通る者は鼻をふさがなければ歩けなかったといわれる。
 かの白虎隊士の遺体も同じだった。
 ある村の肝煎があまりにかわいそうだと哀れんで、ひそかに埋葬したが、密告によって肝煎は捕えられただけでなく、
遺体は掘り起こされて、ふたたび放置されてしまった。
 一方、官軍という名の薩長軍は会津城下の寺に墓地を設けて埋葬している。
 あるいは、こじつけと言われるかもしれないが、震災に対する復興援助の遅れや、
原発に対する信じ難い無為無策を見ていると、第二の東北処分ではないかとさえ思われる。
東北出身の私としては、てめぇら、本気で助ける気があるのかと怒鳴りつけたくさえなるのである。
(佐高 信)
http://www.kinyobi.co.jp/backnum/data/fusokukei/data_fusokukei_kiji.php?no=1937