三島の天皇論はアリバイだよ。
真面目に受け取っちゃダメだと思うな。

事件の一週間前の古林尚との対談でも言ってるけど、
別に封建君主だっていい、ロイヤリティの対象になる
ものなら、と。

つまり、相対主義→絶対主義になるためなら
何でもいいわけ。

それに友人には
「あんな醜悪な老人のためには死ねない。
三田明(当時のイケメンだね)が天皇ならいい」
と言ってる。

三島は事件の10日前に、二人の刺青師に電話して
刺青を入れたい、と依頼してる。
もちろん10日で彫れるはずもなく断られてる。
また、当日、市ヶ谷駐屯地に向かう車中で
自ら「唐獅子牡丹」を歌い出して隊員4人も歌った。
盾の会には三島が作詞した立派な隊歌があるのにだ。

三島言うところの「大義」のために死ぬ、
というのは自裁のアリバイに過ぎないと俺は思ってる。

去年の45周年にNHKね三島特番で
詩人の高橋睦郎が証言してたのがしっくりくる。
「あの人はデカい"無"ですよ。大虚無です。」とね。
三島がニヒリストだったのは小説読ゃ分かる。
「金閣寺」までは世間とのズレは無かったが、
「鏡子の家」で決定的に世間とズレた。
俺は好きな小説だが、高度成長期に向かう
浮かれた世間に、「私のニヒリズム研究」って小説は
ムリ過ぎた。これが15万部。
それ以降、三島の小説は1万数千部しか売れなくなる。
そこからは……もう辛かっただろうと思う。

もともと虚無なんだから。
やりきれなかったろう。

死にたいから、死んだ。
天皇論なんかはそのアリバイだよ。