>>418
筒井の著書が覆そうとした通説のうち、いくつかはこの「宮中グループは被害者であり、あまり責任は無い」
というものへの異議申し立てですね。

陸軍にしても、絶対的な万能の力を振り回したわけではなく、政党政治家や他省の官僚や宮中グループなどとの
綱引きを繰り返していて、ある局面では陸軍の方が振り回された部分もあったということを、さまざまな資料や
回想録・談話などから立体的に掘り起こしています。

ここで私などが長々と説明するより、一度この本をざっとで良いから読んでみると良いです。
「軍部大臣現役武官制があったから、文民には何もできなかった」というのは、かなりの部分で文民側を
免罪するために生み出された、戦後になってから流布した主張であり、実際には現役武官制があってもなくても
陸軍は自己の意思を通すために同じように強引に政治を動かそうとしていたろうし、現役武官制がなくても
歴史の大きな流れは現実の歴史とそう大きくは変わらなかったろうとしています。

「歴史のIF」を立てるとするならば、「現役武官制が無かったならば」という点に拠るのではなく
「政治家側がもっと強い勇気や意思をもって行動していたならば」という部分に拠った方が妥当で
あったろうというのがこの本の主張であったように感じています。