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それでは、なぜ山本五十六は、そのような無理を重ね、反対を押し切ってまで、
真珠湾攻撃を行おうとしたのか?

これまたそもそもの話だが、日露戦争以後、日本海軍はアメリカを仮想敵国としていた。
日本からアメリカ本土に侵攻するのではない。
基本、攻めて来るアメリカ艦隊を西太平洋で迎え撃とうという構想。
そして一大艦隊決戦を行い、日本海海戦の再現で、アメリカ艦隊を撃滅しようというもの。

ところが現実にアメリカとの戦争を考えなければならなくなった時、日本海軍は大問題に直面する。
いくら研究を重ねても、↑の構想のような艦隊決戦は起きそうにないということ。

たとえば井上成美は、1941年6月に絶対に起きないとまで言い切っていた。
艦隊決戦に対する疑問は、実は航空機が発達する前からあり、
これらは高木惣吉著『私観太平洋戦争』に記されている。
これも無視するわけにはいかない当事者の証言だ。