>>466
さてと、ここからが本題だ。

『現代戦争法規論』で述べられている「いつから捕虜とするか」という文章は、足立純夫の解釈であり、
1929年のジュネーブ条約の条文から引用したものではない。(資料1)
ハーグ陸戦法規も1929年のジュネーブ条約も、「いつから捕虜とするか」とは条文に明記されては
いない。「捕獲国軍隊指揮官の自由裁量」でつまりあるとも規定されていない。
ハーグ陸戦法規も「いつから捕虜とするか」とは条文に明記されていないから、指揮官の自由裁量とも
解釈できる。つまり指揮官が捕虜とみなしたら、捕虜だ。
その捕虜は、政府の権内に属する捕虜(俘虜)だ。現地部隊が捕えた捕虜ではあるが、現地部隊の
権内に属することはない。(資料3)
「いつから捕虜とするか」が明記されたのは、1949年のジュネーブ条約(第3条約)だ。(資料2)

----------------------------------------
(資料1)
「1929年の捕虜条約の規定の解釈では、捕獲した敵要員をいつから捕虜とするかは
捕獲国軍隊指揮官の自由裁量とされていた」
『現代戦争法規論』足立純夫 P188

※ これは、1929年の捕虜条約の規定に対する足立純夫の解釈であり、条文から引用した
ものではない。「いつから捕虜とするかは捕獲国軍隊指揮官の自由裁量」という記述は、
足立純夫自身の解釈であり、条文に規定されているわけではない。条文にそういう意味の
記述もない。

(資料2)
1949年のジュネーブ条約(第3条約)
第五条〔適用の始期及び終期〕
 この条約は、第四条に掲げる者に対し、それらの者が敵の権力内に陥った時から最終的に
解放され、且つ、送還される時までの間、適用する。

※ 足立純夫の解釈では、「敵要員を捕獲した瞬間から最終的にそれらの者が解放送還される
時までの間、捕虜の待遇を与えるよう、その始終期を判然と定めた(第5条第1項)」 としている。

(資料3)
ハーグ陸戦法規
第四條
俘虜ハ、敵ノ政府ノ權内ニ屬シ、之ヲ捕ヘタル個人又ハ部隊ノ權内ニ屬スルコトナシ。

※ 俘虜は敵の政府の管理下に置かれるのであって、これを捕らえた部隊や個人に管理されては
ならない、とういうこと。