【儒教社会の売春観】

儒教社会における娼婦をみる眼は厳しい。

水木しげる『姑娘』 (講談社文庫 2010)は、作者が大陸に
出征した人から聞かされた実話にもとづく戦記マンガだ。
日本軍の分隊長にレイプされ処女を奪われた中国人娘が、
慰安婦扱いされるのを拒み、レイプした当人に「女は二夫に
交らず」の理を説き、自分を妻にしてくれと訴えたことから
殺人事件に発展した話だった。

儒教は「貞女は二夫にまみえず」と教えだ。
魯迅はこの女性観がグロな迷信(再婚すると死後、天で
二人の夫に身を割かれる)を生じ、その迷信によって
再婚もできず貧困に苦しむ女性の悲劇を小説にしていた。
                   (※タイトル失念)
レイプした相手に求婚したり、再婚に罪の意識を抱くなど、
今日の多くの者には理解しがたいところだが、そうした儒の
貞操観を強いられた世代が「慰安婦にされた過去」を告白する
のは、現代女性がレイブを訴える以上に勇気を要したろう。

その勇気に対し、儒教の奴隷を生む家族制度を前提に、
「恨むなら親を」と逆ギレして罵ってみせる姿が、どれほど
顰蹙を買うか、冷静になって考えてほしい次第だ。