大隈重信は維新三傑にしばしば言及しているが、木戸や大久保を称揚する一方で
西郷については冷評していることが多い。

『大隈伯昔日譚』(明治二十八年)では「政治上の能力は果たして充分なりしや否やという点については、
頗るこれを疑うのである」と語り、そのために壮士輩が談判を迫り、脅迫状が届いたという。

それでも大隈は発言を訂正せず、その後の座談でも西郷の「感化力」は認めながらも批判的である。

しかし最後の筆録となった『大隈侯昔日譚』(大正十一年)にみえる西郷評は同情的な傾きがあり、
木戸・大久保の人物評とあわせて一つの参考になると思う。