僕の考えを知ってか知らずか彼は語りだした。
「このパンツはさ、ダイヤモンドだよ、古美術さ、もっと言えばカニカマボコさ。イミテーションと言ってしまえばそれまでだろ。でもそれに手を出す奴は皆どこかで納得しているだろ!
 だましてやろうなんて悪意で作ってないさ、俺はな……」
「しかしトンカチとライムとヌクマムじゃあちょっと気の毒な気も……せめて奥さんにはかすとかできないかと……」
「いやそういう製法している業者もいるよ、でもな、これを買いに来る奴は、本当に一番欲しいのは今自分の目の前で女が脱いだのをかぶりたいんだよ。ほかほかのを胸いっぱい嗅ぎたいんだ! わかるか!」
「わかりませーん!」
「君にはその趣味はないかもしれん。しかしだぞ、そのほかほかが叶わない奴らがお金を払って買っていくんだ。その行為がすでに嘘なんだよ、嘘と知ってて喜んでるんだから、それでいいじゃないか。
 だいたいな、日本て国はだめなんだよ。みな一緒にしようと考えすぎるんだよ! いいじゃねえかシミ付きパンツが大好きな男がいたって。やっぱりね俺思うよ。教育だね。教育者がいかんね。
 そもそも島国根性ってのが何も成長させないよ。やっぱりこのままいくと日本って国はだめになるね、本当このまま……」
 彼の独演会は夜中まで続いた。
 使用済みパンティの話から、天下国家に話が移るとは思いもよらなかった。

 (『煮え煮えアジアパー伝』172〜174ページより引用)